最高裁判所第三小法廷 昭和27年(オ)1045号 判決
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〔要旨〕死亡して実在しない登記名義人を登記義務者と表示してした仮登記仮処分命令も無効ではない。
〔説明〕本判決は単に原判決の判示を正当とし、死亡して実在しない登記名義人を登記義務者と表示した仮登記仮処分命令は名宛人のない行為として無効だとする上告理由を排斥した。そして原判決は仮処分命令は、その間何等登記義務者の行為を必要とするものでないから、これに死亡した登記名義人を義務者と表示しても、その効力に影響がないとしたのである。
登記義務者の行為を必要としないから、仮登記仮処分命令に登記義務者として死亡した登記名義人を表示しても差支えないという理屈はよくわからないが、元来仮登記仮処分命令は、仮登記義務者を全然これに関与せしめることなく、単に仮登記権利者の一方的申請によりなされるものであつて、その目的はただ目的不動産についての仮登記権利者を保存するにあるのだから、右仮処分命令に表示される登記義務者は、単に仮登記原因にいう登記義務者であつて、その仮登記をなすに可能な現在の登記名義人であれば足るものと認めなければならないであろう。抑々登記は登記後目的不動産について正常な取引関係に立つ者を生じた場合これに登記した権利を対抗できるという点で意義あるに止まり、これに権利の創設的意義があるわけではないから、目的不動産の権利者は、仮登記仮処分命令により直接に損害を被るという立場にはない。この命令に対し抗告を許さないのもそれがためである。(大正三・四・七、民録二〇・二八八、大正五・一〇・二八、民録二二・二〇〇二、大正一三・四・四、聞二二六四・二二)。従つて不動産の実算的権利者がその仮登記を不当とするときは、訴訟において、仮登記により保存される権利の有無を争い、その仮登記の抹消を請求すべきであつて、単に仮登記仮処分命令の手続上の瑕疵を理由として、これに基く仮登記の効力を否定することは許されない。またこれを仮登記権利者の保護の立場からみるも、相続開始の場合、常に相続登記を経由した後でなければ仮登記をなし得ないということは不当といわなければならない。本判決の結論も以上の見地から妥当だと認められる。 (長谷部調査官)